ケワタガモ
King Eider   Somateria spectabilis




体長56cm ほぼビロードキンクロ(Melanitta fusca)大
オホーツク圏では迷鳥として過去1例[1987年12月27日-1988年2月6日/網走市能取岬/♂第1回冬羽1羽]の記録がある。
♂成鳥(生殖羽)は背と体下面が黒くて首から胸はクリーム色。脇後部に大きな白斑がある。頭部は青灰色で頬が淡く緑色を帯びる。嘴は赤く、基部ではオレンジ色で大きく円盤状に膨らんでいて非常に目立つ。♂幼鳥はほぼ全体的に黒褐色で胸は白く、嘴は橙黄色で基部の膨らみはないか、あっても小さい。♀は全体的に褐色で、背や肩羽・脇に「<<<」状の鱗模様が密に出る。嘴は黒く、基部が「>」状に頭部へ食い込んだ形をしている。ホンケワタガモ(Common Eider/Somateria mollissima/オホーツク未記録種)はやや大きくて、♂は嘴にオレンジ色みがなくて基部の膨らみもない。♀は全体的に褐色で本種の♀によく似るが、背や肩羽・脇の斑は「<<<」状ではなく、「|||」もしくは「(((」状。メガネケワタガモ(Spectacled Eider/S.fischeri/日本未記録種)は全年齢を通じて目の周囲が楕円形に縁取られ、まるで眼鏡を掛けたかのような模様が出る。コケワタガモ(Steller's Eider/Polysticta stelleri/オホーツク圏未記録種)は、小さくて頭や嘴の形が異なる。♀には白い帯で挟まれた青い翼鏡がある。ケワタガモ属(Somateria)およびコケワタガモの♀は褐色の地に細かな模様が出て、一見してマガモ属(Anas)の♀に似ているので注意が必要。オホーツク圏ではマガモ属が海上、それも水平線近くのかなり沖に出ていることがしばしばあり、特に海ガモ類が港湾に避難するような大時化の時でも沖合海上で群れていたりすることがあるため、先入観を持たずにしっかり特徴を見極めたうえで識別するように心がけたい。

参考文献
「北海道野鳥図鑑(河井大輔、川崎康弘、島田明英)」亜璃西社 2003
「決定版日本の野鳥590(真木広造、大西敏一)」平凡社 2000
「Birds of East Asia(Mark Brazil)」Christopher Helm 2009